実習会[6]報告

概要

開催日程

2012年8月29日(水)13:30 〜 2012年8月31日(金)16:00

開催場所
  • 会津大学 研究棟3F中講義室M11
主催
  • 月惑星探査育英会 実行委員会
共催
  • 小天体探査研究会
  • 会津大学先端情報科学研究センター宇宙情報科学クラスター(CAIST/ARC-Space)
後援
  • 惑星科学研究センター(CPS) / 神戸大-北大 G-COE プログラム
  • 日本惑星科学会
  • 宇宙航空研究開発機構
実習内容
  • AMICA画像の見方
  • SPICE toolkitの使い方
  • 小惑星三次元地理情報システムの使い方(3D-GIS, SBMT, SPICE toolkit+plate_renderer)
  • 画像による小惑星形状認識(bundler)
講師
  • 平田成(会津大学)
世話人

本田親寿(会津大学),平田成(会津大学),出村裕英(会津大),諸田智克(名古屋大),木村淳(CPS/北大),小林直樹(ISAS)

参加者
  • 参加者14名
    • 学部生1名
    • 修士課程5名
    • 博士課程1名
    • ポスドク4名
    • 教職員3名
プログラム
  • 8/29 PM 講義・演習
    • はやぶさについて
    • AMICA画像の見方
    • SPICE toolkit
  • 8/29(水) PM19:00~
    • 懇親会(飲み食い処作蔵中央点)
  • 8/30 AM 講義・演習
    • 小惑星三次元地理情報システム(3D-GIS)Web applet版
    • Small Body Mapping Tool (SBMT)
    • SPICE toolkit DSK subsystemとplate_rendererによる小惑星模擬画像作製
  • 8/30 PM 1 講義・演習
    • 3D-GISスタンドアロン版
    • bundlerによる小惑星形状認識
  • 8/30 PM 2 自由実習
    • 形状モデルデータを用いた解析と3D-GIS,plate_rendererを用いた可視化
    • はやぶさ画像と模擬画像によるbundlerによる小惑星形状認識
  • 8/31 AM 自由実習続き
  • 8/31 PM
    • 発表会(宇宙ハッカソンと合同開催)
講義風景

6th_school_photo.png

成果レポート

Small Body Mapping Tool班のレポート (SBMT.pdf

アンケート結果

●本実習を知った経緯

  • 学会メーリングリスト(7)
  • 指導教官・研究仲間・世話人からの紹介(5)
  • 前回実習会でアナウンス(1)

●参加理由

  • 惑星探査データに興味があった(3)
  • 将来行う小惑星研究・探査遂行のため(8)
  • 現在の自分の研究を発展させるため(2)

●実習難度

  • 難しい(7)
  • ちょうど良い(4)
  • 無回答(2)

●講師・TAに求めるもの

  • TA準備期間が短かった・十分な事前準備(8)
  • 内容をもっと絞っても良い(1)
  • 無回答(4)

●自由記述欄

  • 環境依存するツールがあり,もう少し十分な事前準備・期間が必要だった(2)
  • SPICE Toolkitを初めて扱い勉強になった(1)
  • さまざまなツールを触るきっかけとなり良かった(5)
  • 実習中写真を撮っている人が気になった(1)
  • 無回答(5)

●今後取りあげて欲しいトピック

  • 火星探査データ,氷衛星探査データ,かぐやデータ,GeodyneII,探査画像データ,海外の最新探査データ,観測機器開発基礎講座,DSK(形状モデルを扱うためのSPICE Toolkitの追加パッケージ)を詳細に,今回の続編

●開催時期について

  • 回答が少なかったが,授業期間を除いた時期

実習会に参加して

高橋康人(北海道大学理学院宇宙理学専攻D1)

 私の本実習会への参加は,当研究室の PD である木村淳氏からお誘いを受けたことがきっかけである.研究テーマがガス惑星の大気構造の解明であり,主たる研究手法が数値計算である私にとって,観測データの解析技術そのものが自分の研究に直結するとは必ずしも言えない.しかし,将来的には自分の研究から推定される観測可能量と実際の観測データを比較したいと考えており,その予備知識としてデータ解析の手法を学ぶことは意義があると思ったため,参加を決意した.

 TA として参加するにあたり,事前準備として今回の実習内容のトレースを行うこととなった.当初はさほど難しい内容にはならないであろうと考えていたが,実際にトレースを行うとなかなか指示通りの展開にならず,準備段階で四苦八苦することとなった.その主な原因は 2 点あると考えられる.ひとつは実習に用いられたソフトウェアの動作環境が限定的であるにも関わらず,作業環境として最低限何を整備しなければならないのかが明確でなかったため,手探りで準備を進めることになったことである.作業者のOSやブラウザ,そしてそれらのデフォルト設定などがまちまちであったために,統一した手順を確立するのは困難であったことが考えられる.またこれは個人的な反省であるが,他の学会の投稿締め切りの都合で作業時間が十分に確保できなかったことも,準備に余裕を持って取り組めなかった原因と言える.準備段階での経験から,私が日常的に用いている旧式の Eee PC では特に描画の点で性能不足であることが明らかだったため,院生室で用いている大型のノート PC とディスプレイをスーツケースに詰め込んで北海道から福島へと向かうという暴挙に出ることにした.多少重かったが,作業効率自体は格段に向上したため結果的には正解だっただろうと思っている.

 実習本番では平田講師の指導のもと,小惑星探査機はやぶさが取得した各種のデータの読み方や,ソフトウェアでのデータ読み込み及び扱い方を学んだ.普段は fortran しか使っていないため,c や java の知識を付けておけばよかったと反省している.元データはすでに ISAS/JAXA のデータ公開用サイト DARTS にて公開されているが,どんな処理をしたときにどんなアウトプットが得られるのかがわからない私にとっては,大変参考になる実習内容であった.私の作業環境(Debian GNU/Linux 6.0)は比較的マイナーであったためか,最後までうまく起動できないソフトウェアがいくつかあったのが心残りではある.それでもFITS 形式や SPICE といった業界標準のフォーマット・ソフトウェアを実際に弄りながら学ぶことが出来たのは大きな収穫であった.

 今回の実習では講師の平田先生をはじめ,LOC の先生方に準備や滞在期間中大変お世話になった.この場を借りて感謝申し上げたい.普段はなかなか接することのできない「観測屋さんの基礎知識」を垣間見ることができ,大変有意義な時間を過ごすことが出来たと思っている.

納田明達(北海道大学大学院理学院宇宙理学専攻/CPS PD)

 私は探査データ解析実習という会があることを昨年初めて知りました.探査という分野にはまったく触れたことがなかったので,新鮮な印象を受けました.そのため,常々実習会には参加してみたいと思っていました.実は,昨年度の実習会には参加しようと思っていましたが,都合が合わなかったため参加できませんでした.

今回実習会に参加してみて

 実は写真を複数使って3次元形状モデルを作ることができるということは何となく知っていました.しかし,そのモデルを使うことで,誰にでもクレーターカウンティングのような,少し前までは専門家でないとできなかったことが誰にでもできるようになっていることには驚きを覚えました.しかも,全てフリーのツールを使ってできることにとても感動しました.

 私の専門は数値計算なので,ソフトウェアを扱うということから plate renderer ソフトウェアの改良に時間を使ってしまいました.元のコードの思想の理解と書き直しにほとんどの時間を使ってしまったので,何か新しいものを作るという点での成果はとても少なくなってしまったことが心残りです.SPICEをレンダリングに使うという思想の説明がほとんどなかったので,その考えに至るのはとても難しかったのですが,おかげで使い方はある程度理解できたと思います.

 課題に取り組んだのは実質最終日の午前中3時間ほどだけでしたが,もう少し余裕があれば他の課題にも取り組むことができたと思います.

 最後に,世話人の皆様 有意義な時間を有難うございました.実習会とその準備は大変だっただろうと思います.お疲れ様でした.

加藤伸祐(名古屋大学理学部地球惑星科学科4年)

 今回私は諸田先生に勧められて,この実習会のことを知った.今年研究室に配属されて半年,データ解析に関してはほぼ素人であり,少しでもデータの扱いに慣れたいと思って,実習会に参加することにした.このような機会は他にはなかなか無く,実習会に出られるのはとても楽しみであった.

 旅費の関係もあり,TAに志願することになった.おそらく最年少でありながら,サポートする側になるのはとても不安であったが,事前準備でその不安は増してしまった.3D-GISが上手く表示できなかったり,コマンドでの操作に慣れていなかったりと非常に苦労した.諸田先生に助けていただきながら,なんとか準備が完了した時,すでに達成感があったのを覚えている.

 そして,いよいよ本番になった.TA役であったが,本当についていくのがやっとだった.話を聞きながらなんとか自力でやれたときには,少し自信になった.内容に関しては,専門用語・仕様など難しいことが多かったが,まさにデータ解析の手法を学んでいるという雰囲気で,とても楽しく,また,身が引き締まるような良い緊張感で取り組めたのではないかと思う.またこの緊張感は,現に研究者として活躍しておられる方々に囲まれての作業であったことも影響したように思う.

 研究職は私の憧れである.今回の実習会は,研究とはどういったものかという点でも非常に有意義なものであった.自分の未熟さが感じられた.特に,まずはあの長時間集中してパソコンに向かえるようにならなければ,と思う.そして,最後の発表でもあったように,私はこんなことを考えてこんなことをしてみた,と自信を持って言えるようになりたい.自らのオリジナルのアイデアで研究ができるようになれれば,また楽しみも増えるだろう.そんな研究者になれるのはまだまだ先のことだと思うが,この実習会で得たことを活かして,今から,目標を持って研究に取り組みたい.

 この実習会で多くの方々にお世話になりました.特に平田先生,諸田先生には,事前準備から非常にお世話になりました.この場を借りて,厚くお礼申し上げます.

三上 峻(北海道大学理学院宇宙理学専攻M1)

 8 月末,北海道から会津に来た私から最初にでた言葉は「あつい」.今回で6 回目を迎えた惑星探査実習会は、古き良き町並みあふれる会津若松の中心から少し離れた会津大で行われた.この真夏の会津の3 日間で,得たこと感じたことを稚拙な文章ではあるが,書き連ねていきたいと思う.

 この実習会は,はやぶさの観測データとそれに基づく小惑星イトカワの形状モデルを用いた解析を試み,将来の探査データ解析の中心で活躍できるような人材を育成する場であった.私はこのような解析データやその他ツールをいじるのは初めてであり,非常に興味があった反面,実習前の事前準備の段階で,PC の環境依存による不具合が多発し,正直なところ,実習会に対する不安な一面も持っていた.

 講師の平田先生(会津大) には初日の探査機はやぶさの観測装置など,初心者向けのお話から始まり,多数の解析ツールの操作等の説明をしていただいた.最終日には参加者それぞれが好きな解析ツールを使ってイトカワの画像解析を行い,それについて発表を行った.

 私が個人的に興味を持ったのがJohns Hopkins Univ. のApplied Physics Labで開発された,Small Body Mapping Tool (以下,SBMT)というJava アプリを用いた解析である.このツールは,小天体のデータ解析を行うツールであり,ブラウザ上で行える解析で,初心者でも扱いやすい解析ツールである.会津大で開発された小惑星データ解析ツール3D-GIS によく似た機能を持つが,研究者向けのSBMT では形状モデル上でのマーキングができるなど,付加的な機能を持ち非常に便利な印象を持った.最終日の発表会ではSBMT を用いた解析を行い,イトカワ上の特徴的な地形についての発表を行った.このSBMT 私のような画像解析初心者にとっては非常便利なものであるが,よりadvance なものを目指す方は,あまり自己流にカスタムできず,また画像の解像度を上げるとデータ量が多くなり,解析どころではなくなってしまうので注意が必要であることを付しておく.

 実習終了後,北海道に戻った私は,このSBMT を用いて会津大の本田先生や名古屋大の諸田先生が行っていたクレーターのカウンティングを行い,サイズ密度分布をプロットしてみた.また,イトカワ上にある大きさ数十 cm〜数 m サイズの「ボルダ—」という岩が無数に点在し,そのサイズ密度分布も同様にプロットし,先行研究であるMichikami et al. (2008) の図と比較した.カウンティングは慣れていないような人には大変骨が折れるような作業である,と感じた一方,このような作業は非常に楽しいと感じるようにまで至った自分自身に正直驚いている.

 最後に,講師の平田先生ならびに世話人の先生方には実習会中はもちろん,画像解析を行うきっかけを与えてくださり,さらには終了後の解析結果について指導・補助していただきました.みなさまには大変感謝しております.ありがとうございました.

仲内悠祐(総合研究大学院大学M1)

 私は会津大学で行われた,第六回月惑星探査データ実習会に参加した.これからの大学院研究活動の中で,小惑星にかかわる研究をしていくため参加を決めた.しかし惑星データを扱ったことは今までになく,今回たくさんのことを学ばせていただいた.

 実習会の事前準備の段階で,自力ではソフトを動かすことができずメーリングリストなどで参加者同士の情報交換があったことは非常にありがたかった.また,こちらから質問を投げかけると,講師の平田先生をはじめ参加者の多くの方が的確なアドバイスをくださり心強かった.

 実習会が始まると,まずは小惑星探査機はやぶさや SPICE toolkit の説明があった.説明の後,SPICE を用いて小惑星探査機はやぶさの軌道やカメラの視線方向などのデータの視覚化を行った.衛星データでは SPICE は欠かせないとのことで非常に勉強になった.またこれらの情報は,後に作成したイトカワ模擬画像にジオメトリ情報を貼り付ける際に関わってくるため,重要であった.ここまでは gnuplot を用いて行い,順調に作業が進んだ.

 二日目には,イトカワの模擬画像や形状モデルを作成するソフトを用いた実習が行われた.しかし私のPCではこれらが動かない.その場にいた方々の多くの手助けがあったものの,Cygwin で plate_renderer はコアダンプのため作成画像にたどり着けず,Bundler は不具合,SBMT 原因不明,3D-GIS はGPUの関係から起動できず途方に暮れた.結局,その日の午後から debian をインストールし三日目の実習会までにはplate_renderer の起動にはたどり着き,一人遅ればせながら模擬画像ができたときの感動をかみしめていた.実習界の最中はソフトを動かすことに手いっぱいであったが,今後は学んだことを生かしてデータ解析スキルを上げていきたいと考えている.

 今回はTAとして参加したにもかかわらず,教わるばかりであった.講師の平田先生をはじめ多くの方にご指導いただきました.また,会津大学の本田先生には,ほぼつきっきりでご指導いただきました.この場をお借りして,深く感謝の意を表させていただきます.かさねて,今後ともよろしくお願いいたします.

石山 謙(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻 M2)

 第6回月惑星探査実習会は,3日間,会津大学で行われた.この実習会では,惑星探査機「はやぶさ」の観測データと,それに基づく小惑星イトカワの形状モデルを使って,小惑星の形状・地形に関する解析を行った.講師は,会津大学の平田成先生である.3日間の内容の感想を下記に記載していく.

 初日は,まず,はやぶさとその観測データについて説明をして頂いた.私ははやぶさの観測装置についてはよく知らなかったため,初めて聞く人向けにお話しをして頂き大変助かった.そこから話が進み,SPICE toolkitのお話が絡んできた.SPICEとは,人工衛星の様々な補助的なデータ(カーネル)を引き出す重要なツールである.最近の人工衛星が取得する補助データは,すべてSPICEの規格に従う.私は,前々から「SPICE」については耳にしていたがよく知らなかったため,非常に有意義な時間を過ごすことができた.しかし,初めてということもあり,途中でお話のメモを取るので一杯になり,お話についていけなくなってしまった.

 2日目の午前中は,小惑星三次元地理情報システム(3D-GIS),Small Body Mapping Tool (SBMT),SPICE toolkit DSK subsystemとplate_rendererによる小惑星模擬画像作製を行った.3D-GISはウェブから簡単にアクセスすることができ,イトカワをマウスで動かすことが可能である.これはとても面白いと感じた.SBMTも3D-GISと似たところがあるが,こちらは研究者用にも改良されたバージョンもあり,非常に研究には役立つと思われる.また,plate_rendererは,本物そっくりの疑似イトカワをはやぶさの軌道情報を基に様々な位置からイトカワを撮像することを可能とするツールである.このツールには,大変驚かされてしまった.2日目の午後は,Bundlerというツールを使った小惑星形状認識を行った.このツールは,イトカワの様々な位置から撮像した多くの画像から,小惑星の形状を認識するツールである.今回,もっともはまったツールがこれであった.午後はこのツールの実行を行うことに力を入れ,夕方近くなってBundlerが動いた瞬間は感無量であった.

 3日目は,Bundlerを使ってよりイトカワらしい形状モデル作成に努めた.最終日は,毎回発表会が設定されているため,Bundlerに使用したイトカワの画像の撮像条件(太陽光とカメラとの位相角,入射角,出射角)をSPICEによって調べることを試みた.しかし,SPICEの復習まで手が回らなかったため,国立天文台の山田竜平さんと押上祥子さんに協力をして頂いた.山田さんと押上さんには,前回の実習会でもお世話になり,今回で2度目である.この場を借りて感謝いたします.また,講師の平田先生ならびに世話人の先生方には,多くのサポートをして頂いた.厚くお礼申し上げます.

Last modified:2012/11/05 14:12:53
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