セミナー: CPSセミナー/神戸大学 惑星学専攻 特別講義
日時: 2017年9月1日(金)16:30 -
場所: 神戸大学六甲台キャンパス理学講義棟 Z103号室
講演者: 渡部 潤一 (国立天文台・副台長)
タイトル: 幻の流星群を追って
要旨: 1956年12月5日、第一次南極越冬隊をのせて南極に向かっていた「宗谷」が、インド洋上で突然の流星雨に遭遇した。明るい流星が一時間に500個も出現し、その放射点(流星が四方八方に飛び出すように見える天球上で点)の位置から「ほうおう座流星群」と命名された。だが不思議なことに、この流星群は謎だらけであった。
なにしろ、その後ほとんど出現しなかったばかりではない。流星群の母親とされた彗星も、1819年に一度だけ姿を見せた周期5.1年のブランペイン彗星とされていたが、この彗星そのものも行方不明のままだった。こうして、ほうおう座流星群は”幻”となっていった。
2005年、地球近傍小惑星2003WY25の発見が、その”幻”の理由を解く鍵になった。われわれは最新のダスト・トレイル理論の計算によって、1956年の大出現の理由、その後、出現しなくなった理由も明らかにした。さらには2014年には出現条件が良いことが判明した。出現のピーク予測時刻は午前8時から10時(日本時)と、日本では昼間だったため、観察可能なスペイン・カナリー諸島とアメリカ東海岸とに遠征隊を送ることになった。果たして、幻の流星群は出現するのか。本研究の結果とともに、彗星の物理的進化を知る上での意義を紹介する。
キーワード: 太陽系小天体、彗星、流星
世話人: 臼井 文彦