セミナー: CPSセミナー
日時: 2015 年 4 月 1 日(水)15:30-
場所: CPS (統合研究拠点3階) セミナー室
講演者: 齋藤 泉 (京都大学大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻 気象学研究室)
世話人: 林 祥介
タイトル: ニュートン冷却を散逸過程とする強制浅水乱流における赤道西風形成のメカ ニズムについて
要旨: 木星や土星で観測される縞状の構造とそれに伴って吹く卓越した東西ジェットを説明するモデルとして, 惑星大気表面の薄い層における大規模運動を考えるものがある.
回転球面上の強制浅水乱流はそのようなモデルの一つで, 縞状の構造の 出現に加えて, 低緯度ほど大きな振幅の東西ジェットや, 極付近で顕著になる渦 的な運動などの再現に成功している (Scott and Polvani, 2007). ただこのモデルでは, 赤道において木星や土星で見られるような強い西風を再現できないことが問題であった. これに対しScott and Polvani (2008)は, 強制浅水乱流において, 散逸過程としてレイリー摩擦ではなくニュートン冷却を採用することで, ロバストな赤道西風を形成することに成功した.

本研究では, 上記の赤道西風が以下のメカニズムにより生じることを明らかにした. まず, ニュートン冷却が導入されることにより球面浅水系の固有モードであるハフモードの構造が変形し, 等位相線が緯度方向に西向きか東向きに傾く. この構造変形によって各ハフモードは帯状平均流の加速を起こす. ランダムな強制によって励起されるハフモードによって生じる時間発展初期の帯状流加速を, 弱非線型の理論に基づいた統計解析により評価した.理論は赤道西風が生じること を予言しており, 赤道西風の加速には主にロスビーモード(ニュートン冷却によって位相が西に傾く)が寄与している. 理論によって予言される帯状平均流の時間発展は, 非線型シミュレーションより得られた,アンサンブル平均した帯状 平均流の時間発展と定量的に一致していた.
キーワード: 木星, 帯状構造, 強制浅水乱流,赤道西風ジェット, ニュートン冷却, ハフ関数