日時: 2012 年 11 月 2 日(金) 15:00-16:00
場所: CPS セミナー室
講演者: 山中 大学 (JAMSTEC)
世話人: 高橋 芳幸
タイトル: 海陸共存惑星地球の気候的特性と人類のこれから
要旨: 我々の惑星地球は、本体内部の活動による地殻表面の凹凸が維持され、太陽からの距離で決まる温度条件で維持された液相の水は全球を覆わず海陸共存状態にあり、その気候は、地殻凹凸が海面を越えない水惑星や、液相の水のない陸惑星と本質的に異なっている。

第一に自転惑星流体では、水平な渦(Rossby)運動が鉛直の対流(重力波)運動より卓越し木星型惑星の縞模様のようになるが、海洋は陸を越えず曲げられ黒潮・湾流のように極向きに熱を運ぶ。第二に惑星上の日射は、公転(離心率による全球同相および自転軸傾角による半球間逆位相)周期、ならびに自転(太陽日)周期で変化するが、これらは海陸の熱的コントラストで大いに増幅される。第三に、大気・海洋間には海洋向きの力学的と大気向きの熱的な強制による相互作用が存在するが、陸面・海面間では液相の遅い河川と気相の速い海風が平衡している。これら大気・海洋・地殻という地球表層3相間の三重点が海岸線である。

海陸共存は特に赤道域で本質的に重要である。ここでは自転軸が水平となるため対流運動が卓越し、海陸間の日射加熱差や水循環に支配されるからである。特に島嶼で海岸線が長いインドネシア海大陸域は、最多雨となる。水惑星では1〜2ケ月かけて地球を周回するだけの暖水と雲のペアは、海大陸と米阿両大陸で暖水が堰止められ反射されるため数年周期で振動する(エルニーニョ南方振動、インド洋ダイポールモード)。
従って、この海大陸域は、地球にいながらにして観測に立脚した惑星大気科学的研究を行える対象として、極めて重要である。

海岸線や河川には、人類世界拡散や文明発祥以来現在もなお人口や富が集中し、そのため観測も偏在するが、偶然にも気候学的特異点であったため弊害は抑えられた。気候学的重要性の割には観測頻度が低かった海大陸域では、今は日本観測陣は撤収フェイズにあり、G20インドネシアが本格的に参入する全地球観測がまさに開始されようとしている。