日時: 2010 年 12 月 1 日(水) 16:00-17:00
場所: 神戸大学自然科学総合研究棟 4 号館 809 号室
講演者: 瀧川 晶 (東京大学)
世話人: 木村 宏
タイトル: 星周コランダムダストの形成と進化
abstract: 赤外分光観測により,進化末期の恒星や原始惑星系円盤にケイ酸塩や酸化物などの固体微粒子が存在することが明らかにされている.これらの微粒子は,高温ガスから凝縮し,その後の加熱や化学反応を経たものと考えられている.コランダム(Al2O3)やスピネル(MgAl2O4)は,酸化的星周環境における高温凝縮物のひとつであり,ケイ酸塩や金属鉄といった主要固体物質の凝縮核となりうる物質である.結晶の形状(晶癖)が,星周鉱物の形成環境を反映するだけでなく,赤外吸収スペクトルや隕石コランダム粒子の形状として観測可能であり,実際のダスト形成条件を理解する鍵となりうることに着目して,これまでコランダム凝縮カイネティクスの実験的理解,コランダムスペクトルの予測,赤外分光観測,隕石中コランダムの分析などを統合的に行ってきた.
星周環境に近い条件では,多量の凝縮物を得ることは実験的に難しいものの,気相からの凝縮物を赤外吸収スペクトル測定することは,赤外分光観測からダスト形成条件を推定するためには非常に重要となる.そこで今回,CPSエクスチェンジプログラムによる支援を受け,Friedrich-Schiller大学(ドイツ,イエナ)に3週間滞在し,低圧下におけるコランダムとMgガスとの反応で得られた非化学量論的スピネルの赤外分光測定を行った.
本セミナーでは,ドイツで行ったスピネルの赤外吸収スペクトル測定の結果に加えて,コランダム・スピネルの形成実験,プレソーラーコランダム粒子の形状分析結果について紹介する.