日時: 2010 年 1月 28日 (木) 16:30 - 18:00
場所:

北海道大学理学 8 号館コスモスタジオ
(ビデオ会議システムを用いて中継予定)

講演者: 中川貴司
(チューリッヒ工科大学)
タイトル: 初期地球の影響を考慮した地球コアの熱史
abstract: 最近発表されている初期地球の熱化学的状態に関する仮説によると、コア分離が 起きた直後のコアーマントル境界ではマグマオーシャンのような大規模部分溶融 状態が十分におき得るくらいの高温状態であったと考えられている[Labrosse et al., 2007].しかし、初期地球の熱化学的状態は過去に地球が間欠的なオーバー ターン[e.g., Tackley et al., 1994]を経験していることなどから、大きな不確 定性がある.ここでは、フリーパラメータとして初期地球のコアーマントル境界 の温度、コアに含まれている内部熱源量、ならびにマントルを構成する不適合元 素に枯渇したハルツバーガイトとそれらに富んだ中央海嶺玄武岩(MORB)の密度差 をとり、コア熱史理論モデルと結合したマントル対流フルシミュレーション [Nakagawa and Tackley, 2005; Nakagawa and Tackley, 2010 submitted]を行 い、現在の地球コアの状態(内核半径と長期間の生成磁場の維持)を説明できる 熱史シナリオの構築とコア熱史における重要なパラメータについて議論を行っ た.その結果、熱史の最終状態において、初期コアーマントル境界温度にはあま り依存しないことがわかった.しかしながら、現在の内核サイズと生成磁場維持 の条件ならびに地球最下部マントルの不均質構造などの制約条件を考慮すると、 初期コアーマントル境界温度は5000K〜 6000K、コア内における内部熱源(カリ ウム量にして)については400-800ppm程度で現在のコア熱史の制約条件に調和的 なシナリオが得られる.また、ここで得られた初期コアーマントル境界温度は、 初期地球においてマグマオーシャンのような大規模部分溶融状態を作り出すこと が可能である.