日時: 2008 年 8 月 11 日(月) 15:10 - 16:10
場所: 京都大学大学院理学研究科 5 号館 318 号室,
東京大学本郷キャンパス理学部 1 号館 807 号室,
神戸大学 自然科学総合研究棟 3 号館 506 号室奥のセミナー室,
宇宙研,
大阪大学,
東海大学,
東京工業大学,
国立天文台,
名古屋大学,
北海道大学 低温科学研究所
(ビデオ会議システムを用いて中継予定)
講演者: 武藤 恭之(京都大学)
タイトル: I 型惑星移動研究の現状
abstract: I型惑星移動とは、10地球質量程度までの比較的軽い原始惑星と原始惑星系円盤 が互いに重力的に相互作用することにより、原始惑星の軌道長半径が時間的に変 化する現象である。 I型惑星移動の研究は、1970年代後半から1980年代初頭にか けての GoldreichとTremaineによる研究を端緒として、現在も盛んに研究が進め られている。特に、Tanaka et al.(2003)では、局所的に等温な円盤ガスの仮定 のもと、詳細な線形解析がなされ、原始惑星落下の時間スケールが10万年程度で あるとの結論が得られた。この結果は、数値計算によっても確かめられている。 このことは、観測的に示唆されている円盤ガス散逸の時間スケールより短いの で、原始惑星が形成されてもすぐに中心星に向かって落下してしまい、惑星は存 在できないということになる。これは、原始惑星落下問題と呼ばれており、惑星 形成における大きな理論的未解決問題である。 近年の研究により、原始惑星が 中心星に短い時間スケールで落下するという結論は、これまで考えられてきたほ どにrobustなものではないということが認識されつつある。惑星周囲のガスが実 際には等温で近似できないという効果を考えるだけで、原始惑星移動はその方向 すら変わりうる (Paardekooper and Mellema 2006, Baruteau and Masset 2008)。最近の数値計算を用いた研究では、結果が人工的に入れた重力の softening lengthに依存するという報告もあり(Paardekooper and Papaloizou 2008)、実は、I型惑星移動は(部分的な理解はあるものの)その物理的メカニズム さえもはっきりとした理解ができていないといわざるを得ない。 本セミナーで は、I型惑星移動について、現在までに何が分かっていて、何が問題なのかとい うことを整理したうえで、特に円盤ガスの非等温性が原始惑星移動に与える影響 について、最新の論文をreviewする予定である。時間が許せば、乱流や磁場な ど、他の効果についても触れたい。
おもな参考文献: Paardekooper and Papaloizou, A&A 485 877 (2008)